No 73
絵本のタイトル んぐまーま
作者 谷川俊太郎
大竹伸朗
訳者
出版社 クレヨンハウス

73  『 んぐまーま 』

「ん」で始まる言葉なんか日本語にはありません!と思っている方にはちょっと刺激的なタイトルのついたこの絵本は、内容の方もすこぶる刺激的です。どのようにアクセントをつけて読めばよいのか見当も付かない谷川俊太郎さんの文に、大竹伸朗さんの奇々怪々な絵がからみあって、なんとも不思議な世界が醸し出されています。

解説によれば「あかちゃんから絵本」として出版されているとのことですが、大人から見れば可愛らしいあかちゃんも、本人の身体感覚(もしそのようなものがあれば)からすれば、四つ足でずりずりと這いずり回るさまは、虫やとかげなどの方に親近感を持っているような気がしますし、やさしく語りかけられる言葉の響きよりも、時にはちょっと不思議な音の方が魅力的に聞こえることがあるもかもしれないと思ったりもするのです。そう考えると、このなんとも不思議な絵本も、あかちゃんにしてみればごく当り前の日常や成長を描いているのかもしれず、「あかちゃんから絵本」というのは、あかちゃんの時から読んであげる絵本というよりも、あかちゃんから発信している絵本という意味ではないのかと、一人感じ入ってしまうのです。

泣くことでしか自分の思いを表すことができなかったあかちゃんも、次第にぶつぶつと何かつぶやき始め、「んまんま」とか「まんま」などと話すようになるのですが、私が「んぐまーま」という響きになにか魅力を感じてしまうのも、ひょっとすると、自分があかちゃんだった時の微かな記憶のせいなのかもしれませし、「ん」で始まる言葉が日本語にないのは、大切なあかちゃんたちに譲っているからなのだという気もしてきます。これはそんな不思議な気持ちにさせる絵本なのです。(S.T)

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