No 7
絵本のタイトル もりのなか
作者 マリー・ホール・エッツ
マリー・ホール・エッツ
訳者 まさきるりこ
出版社 福音館書店

7.もりのなか

ジョン・レノンはかつてその歌のなかで「想像してごらん」と語りかけていた。しかし今、豊かな“想像力”は失われつつあるのではないだろうか。この情報化社会のなかにおいて、バーチャル世界は様々な分野で見られるようになったが、“バーチャル”と“想像力”は結びつくものではない。豊かな“想像力”が育まれるのは、幼児期の経験が重要であることは言うに及ばないであろう。

幼児教育においては、子どもたちの感性や想像力を育むことが一つの命題となっているが、絵本はその為の手段として大きな役割を果たしている。学生時代、学生同士で絵本の読み聞かせをした経験があるが、聞き手側(幼児役)でいる時によく「字を追わないで絵を見なさい」と注意されたものだ。子どもであれば字を追うようなことはせず、耳から入った言葉と目から入った絵で、絵本の世界に入っていくのであり、字を追う大人に“想像力”は育まれないのである。

フランスの児童文学者ルネ・ギヨーが、「子どもは、大人たちのなかにはいっていくよりも、ずっとずっと、動物のなかにはいっていくほうが安心する」と述べているが、まさにエッツは『もりのなか』でそれを実践し、子どもたちが“安心感”を持って絵本の世界へ入れるようにしたのではないだろうか。また、動物たちと親しんだ幼時期を過ごしたエッツにとっては、身を以てその事を感じていたのであろう。“かみのぼうしをかぶり、あたらしいらっぱをもって”と、聞き手と等身大の主人公が、“髪をとかしたライオン”“セーターを着て靴を履いたゾウの子”“ピーナッツとジャムとおさじを持ったくま”たちと散歩して、“はんかちおとし”“ろんどんばしおちた”“かくれんぼ”をして遊ぶ、まさに子どもたちの生活そのものがそこに展開するのだから、自ずと主人公と自分自身が同化してしまう絵本である。この本を幼稚園で子どもたちに読み聞かせをすると静かに絵本の世界に入っていく子どもの姿を見ることができるのもその現れである。『もりのなか』は子どもたちにとって『ゆめのなか』ではないだろうか。(m.k)

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