No 57
絵本のタイトル ゆきむすめ
作者 今江祥智
赤羽末吉
訳者
出版社 偕成社

57『 ゆきむすめ 』

「ゆきおんな」を見た人はいなくても、その名前は誰でも知っていることと思います。有名なお話としては、柳田国男の『遠野物語』や小泉八雲の『怪談』におさめられているものがありますが、雪の多い地方では、恐らくどこでも、「ゆきおんな」にまつわるお話が伝わっているのではないでしょうか

この絵本のお話は、今江祥智が民話風に創作したものです。しかし、「ゆきおんな」が、人間と結婚して風呂に入らされ、溶けてしまうといったくだりなどは、津軽民話の『つらら女房』にも見られますので、さまざまな地方に伝わる「ゆきおんな」の話をベースに作られているのだと思います。しかし、このお話のひと味違うところは、「つららこ」「ゆきむすめ」といった表現を使うことによって、それまでは、どうしても「もののけ」の域を出なかった「ゆきおんな」を一気に血の通った親近感のわく存在として、読者の身近に引き寄せることができたということです。

今江祥智は、大阪に生まれ育ったと聞いていますが、関西弁とは180度違った、まったりとした方言を使い、しっかりと練られたお話を、更に味わい深いものにとさせています。また、赤羽末吉の描く絵も、見返しを開けたとたんに、読む者を雪深い里へ誘ってくれます。  民話や神話には、人間が太古の昔から抱え続けてきた自然に対する畏怖と挑戦、また自然との調和のあこがれと挫折といった思いが数多く綴られていますが、この『ゆきむすめ』も、まさしく現代に語られた民話の一つとなっているのです。

まあ、難しい話はともかく、雪がしんしんと降る夜に、囲炉裏とか炬燵で暖をとりながら、こんなすてきなお話を聞かされて育ったら、それだけでみんないい子になっちゃうと思うのは私だけではないと思うのですが。 (S・T)

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