No 49
絵本のタイトル かちかちやま
作者 おざわとしお
 赤羽末吉
訳者
出版社 福音館書店

49  『 かちかちやま 』

人間は、食べていくために畑を耕しながら、そこに昔から住んでいた動物とも折り合いをつけながら暮らしてきました。『かちかちやま』は、人間とたぬきやうさぎといった動物達が対等な存在として暮らしていた時代のお話です。日本の昔話のなかでも有名なお話で、全く知らない人はいないようにも思いますが、地方によって幾分ニュアンスが異なって伝わっていることもあり、自分の記憶と違っていたりすることも新鮮な驚きです。

このお話の冒頭に、「じいさまは、やまのはたけへ まめまきにいきました。」とありますが、人間は、食べるために自然の原野を耕して畑を作ってきたという歴史がここにあらわされています。しかし、自然の1つの代表であるたぬき側からすれば、自分達の生きる場所を奪われたということになってしまうのです。『かちかちやま』では、たぬきが生きる場所を取り戻すために人間に反撃したけれども捕らえられ、ばあさまを殺すという仕返しをして自然の中に逃げる。そこで、うさぎの敵討ちが始まる。というようにお話は展開していきます。

他から出版されている『かちかちやま』では、残酷な表現が削除されていたり、他の表現に変えられてしまっていることがあります。この絵本でも、ばあさまが殺されて、じいさまがそれを食べたというところが残酷だといわれますが、血が流れたとか実体は語っていませんし、絵でもばば汁の場面がリアルには描かれていません。たぬきの側からするとこのままではたぬき汁にされて食われるのだから仕返しは当然と言うことになります。(参考文献 小澤俊夫『働くお父さんの昔話入門』日本経済新聞社)

私には、ばば汁まで飲ませられたじいさまの気持ちを考えると、たぬきをやっつけるのは必然という気がしたのですがいかがなものでしょうか?敵討ちでは、うさぎの巧妙な知恵とたぬきとのやりとりに子どもも大人もドキドキできるのではないかなと思います。軽妙な語りに赤羽さんの絵がぴったりと合っていて、日本の昔話の醍醐味を味わえる絵本の1冊です。(k.s)

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