No 45
絵本のタイトル いたずらかまきりキリリ
作者 得田之久
訳者
出版社  童心社

45  『 いたずらかまきりキリリ 』

5月上旬のことでした、朝、保育室の窓を開けようとすると、カーテンに生まれたばかりの赤ちゃんカマキリがたくさんぶら下がっていました。部屋に置いてあった卵から、いつのまにか孵っていたのです。この時は孵化の瞬間を見ることはできませんでしたが、その後、登園してきた子ども達と大騒ぎをしながら部屋中に散らばっているカマキリをつかまえ、庭に逃がしてあげました。
 そして、丁度この楽しい騒ぎのあった数日後、「得田先生の新しい絵本が出版されます」という手紙と一緒に送られてきたのがこの絵本だったのです。

得田さんは、虫たちを題材とした絵本を多く出されていますが、どの作品も、緻密さだけではなく、虫たちへの愛情が感じられる温かい絵と簡潔な文章が印象的です。
 そして、『かまきりのちょん』(1967年福音館 残念ながら絶版)をはじめ、カマキリの誕生から死までを尊厳高く描いた『かまきり』(1971年年福音館 これも本当に残念ながら絶版)など、カマキリを主人公にした絵本を多く描かれていることから、カマキリへの思いには特別のものがあるようにも感じられます。
 それでも、私は、カマキリのあの残忍そうな三角の顔や大きな鎌はちよっと苦手でした。しかし、カマキリが孵化する瞬間を見てからは、大部印象が違ってきたのです。卵嚢から溶けだした乳白色の液体が、数センチ落下するうちに、一滴一滴小さなカマキリに凝固していく様子は、何回見ても不思議でたまりません。そして、一息で飛んでいきそうなか弱さにあっても、お尻を上げ、カマを振りかざして、ちょこまかとしかし威風堂々と動き回る姿には、おもわず応援したくなってしまったのです。

この本を描かれた得田さんから、「虫たちは、子どもにとって一番身近な自然だと思います。そして虫たちの命はとてもはかないものなので、沢山触れて遊んでください」というお話を伺ったことがありました。子ども達は、虫が大好きですぐにつかまえたり、飼おうとしたりしますが、結果的に死なせてしまうことが多く、どうしたら良いのかと悩むことが多かったので、とてもほっとさせられたことを覚えています。
 送られてきた手紙の中には「一昨年に初孫が生まれてから、猛然と絵本への創作意欲が沸き上がって、2年の間に200近くの絵本のアイディアが生まれたが、その多くが物語絵本風のものでありました」と書いてありました。そういえば『いたずらかまきりキリリ』の目には、白目と黒目が描かれていて、そのために表情豊かになっています。今までとはひと味違った得田先生のこれからの作品を楽しみに感じています。(S.T)

 

« »