No 28
絵本のタイトル ケニーのまど 』
作者 モーリス・センダック
訳者 じんぐうてるお
出版社 冨山房

28 『 ケニーのまど 』

「夢」「4本足の雄鶏」「7つのなぞなぞ」とくれば、何かワクワクしてきます。しかもセンダックが最初に文と絵の両方を手掛けた作品となれば、ワクワクどころかドキドキ。でも、表紙を見るとちょっと地味そう。パラパラと中をめくると、やはり絵はセピア色を基調とした地味な感じで文字も一杯、子どもが好みそうな絵本をお探しの場合にはちょっと躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この作品は、ちょっと古い言い回しをすれば、子どもの成長を描いた“いぶし銀”の様な絵本なのです。

子どもが冒険や大きな出来事を乗り越え、たくましく成長していく姿を描いた絵本は沢山あります。でも、実際には子どもは遊ぶことによって、少しずつ成長していきます。
大人の目からみれば、上手くいったとか失敗したとか見えても、子どもの遊びには成功も失敗もなく、全てが子どもにとって大切です。そして、その遊ぶプロセスの中にこそ価値があるのです。こう考えると、ケニーの見つけだしたなぞなぞの答えが正解であるのか否かということはあまり問題ではなく、ケニー自身が自分で答えを見つけだしていく過程に意味があるように思えてきます。作者であるセンダック自身の思いはどうだったのでしょうか。

後にセンダックは、自らの少年期からの思いや憂いをそのモチーフごとに練り上げ、『かいじゅうたちのいるところ』をはじめとする3部作を創り上げていきます。この『ケニーのまど』では、それらのモチーフが混沌と入り交じりながらストーリーが展開していきますが、まさしくセンダックの思いが全てこめられた作品なのかもしれません。
 “まど”という言葉は、内から外、外から内を見つめる文字通り窓口という意味を持ちますが、この『ケニーのまど』は、センダック自身にとって、自らの少年時代を振り返る窓口であったことは確かなのです。(T.S)

 

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