No 259
絵本のタイトル 雪の写真家 ベントレー
作者 ジャクリーン・ブリッグズ・マーチィン
メアリ?・アゼリアン
訳者 千葉茂樹
出版社 BL出版

259『雪の写真家 ベントレー』

 2014年は首都圏でも雪が多くふりました。2月初頭、2週続けて結構な積雪があった時には、雪国の人の苦労はこんなもんじゃないと自らに言い聞かせながら、一日中雪かきに追われていました。

今でこそ雪はしんどいと思ってしまう私でも、子どもの頃は雪が降るのを心待ちにしていて、雪が積もった朝の、いつもとは違った静けさや明るさは格別な喜びでした。

今回紹介する絵本は、私のような俗物ではなく、子どもの時の純粋な気持ちを持ち続け、雪の研究と結晶の写真撮影に一生を捧げたウィルソン・A・ベントレーの伝記絵本です。

作品は、重厚な木版画によって構成され、ベントレーの素朴でひた向きな情熱が各ページに表われています。内容的には地味に感じられるかもしれませんが、1人の人物の一生を真正面から捉え描いた骨太の作品で、1999年のコルデッコット賞受賞も納得です。

私がこの絵本を紹介しようとしたもう一つの理由は、2014年が「国際結晶年」だったということです。残念ながら、私は勿論のこと私の周辺では誰一人としてそんなことは知らずに年が終ってしまいましたが、現代結晶学の誕生から100年目の節目に当るとのことで、日本でも多くのイベントが催されたとのことです。

絵本の表紙裏の添え書きには「雪は天から送られた手紙である」という有名な言葉を残した、中谷宇吉郎博士(寺田寅彦の弟子)も、ベントレーが出版した雪の結晶の写真集を目にしたことがきっかけで研究に進んだと書かれています。初めて人工的に雪の結晶を生成する方法を確立した中谷博士にとって、この言葉はロマンチックな表現ではなく、地上で雪の結晶の形を観察することによって、上空の雲の中の気象条件を推定できることだと聞いていますが、解釈はともかくとして「雪は天から送られた手紙である」と捉えるか、雪を腰痛の元凶として捉えるかによって、冬の過ごし方も随分違ってくるように思います。それに、雪の降る中、暖かいこたつに入りながらこの絵本を読む、というのも素敵な冬の過ごし方かもしれませんね。(S.T)

 

« »