No 233
絵本のタイトル どこいったん
作者 ジョン・クラッセン
訳者 長谷川義史
出版社 クレヨンハウス

233『どこいったん』

夏休みを利用し、伊勢に行ってきました。式年遷宮が行われているからといった敬虔な気持ちではなく、一度も行ったことがなかった、という軽い気持ちからでした。

伊勢神宮の他にも、尋常ではない混雑にも少しも慌てずにテキパキと対応する赤福本店の若い店員さんの仕事っぷりなど、いろいろ印象に残ることがありましたが、その一つに伊勢で耳にした言葉の柔らかさがありました。大阪弁よりは幾分ソフトな響きで、関西に住む叔母や叔父のことなどを思い出していました。

今回紹介する絵本は、ジョン・クラッセンの作品の、前回紹介した『ちがうねん』の前作にあたるものです。訳も同様に長谷川義史さんによるもので、ちなみに長谷川さんの初めての翻訳絵本とのことです。

絵本の話は、大事にしていた帽子をなくしてしまったクマが、失意を抱えながら他の動物たちに所在を尋ねながら探し歩くというものです。帽子が見つかるかどうかは、読んでのお楽しみですが、原文ではショッキングな結末も、長谷川さんのほんわかとした大阪弁の訳で、むしろユーモラスに感じられるのですから、言葉の響きの大切さをあらためて感心させられます。

また、序盤の視線を合わすことなく行われる会話の違和感(無表情というのでしょうか)と、核心的な場面で視線が合致した時の臨場感(?)も印象的で、言葉と同様に、視線が合うということの意味の大きさをあらためて感じることとなりました。(S.T)

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