No 214
絵本のタイトル 空の絵本
作者 長田 弘
荒井 良二
訳者
出版社 講談社

216『空の絵本』

「ありふれた」という言葉は、個人的にはあまり良い意味で使わないと思っていました。ところが、「ありふれた大会かみしめて」と題されたロンドンオリンピックに関するコラム(8月13日 朝日新聞)を読んだことをきっかけに、ちょっと違った印象を持つようになってきました。

コラムは、前回の北京オリンピックにおいて、開会式の翌日に、家族と北京に観光に訪れていた義父が暴漢に刺され亡くなってしまうという悲劇を乗り越え、監督として、見事に米国男子バレーボールチームを優勝に導いたヒュ−・マッカーチョン氏が、今回のロンドン大会では、世界ランク1位の米国女子バレーボールチームを率いて決勝に臨んだものの、おしくもブラジルに破れて銀メダルに終った後のインタビューに関するものでした。

監督は、「前回と違い、五輪らしい大会になりました?」とさりげなく聞かれた質問に対し、かみしめるように、「良い意味で、とてもありふれていた。それは素晴らしいことだ。皆が一つの街に集い、何にも惑わされず、スポーツに集中してベストを尽くす。五輪の理想だ。そして、終れば家に帰るんだ」と語り、それを受けてのタイトルだったのです。

幼稚園の園だよりにも、このコラムの言葉を引用しながら、「朝、幼稚園に集まり、仲間と遊びに没頭し、また家に帰って行く」という幼稚園の一日は、見方によっては「ありふれた毎日」と言う人もいるかもしれないが、そのありふれた繰り返しの中に、子どもたちが成長していく大事な体験が詰め込まれていると書かせてもらったのですが、そのほんの数日後に見つけたのが、今回紹介する絵本です。

この絵本を手にとるきっかけは、長田弘、荒井良二という二人の作品であったということもさることながら、帯に書かれていた「ありふれた奇跡」という言葉でした。そもそも、ありふれていないからこそ奇跡なのではないか、などと思いながら、コラムを読んで感じていた「ありふれた」という言葉の意味合いと、この絵本に描かれている内容とは一緒なのだろうかと、ドキドキしながら本を開くと、そこには、紛れもない「ありふれた奇跡」が描き出されていたのでした。(S.T)

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