No 197
絵本のタイトル 川はどこからながれてくるの
作者 トマス=ロッカー
訳者 みのうら まりこ
出版社 偕成社

197  『 川はどこからながれてくるの 』

私の家の近くには、農業用の灌漑に使われていた溜め池がいくつかあり、小学生の頃はよくそこで釣りをしました。高学年になると、友だち同士、どこどこに池があるらしいといった情報を交換したり、地図で池を探したりもしました。

中学に入ると、電車で多摩川を渡って通学するようになりましたが、当時の多摩川は家庭排水による汚染が深刻で、電車から見える多摩川園前の堤は、いつも白く泡立っていました。それでも、川沿いを走る南武線で、何駅か上流にのぼると、ハヤやウグイなどがたくさんいて、毎月一度くらいは、釣りに出掛けていました。そのうち、更に上流はどうなっているのだろうか?どんな魚がいるのだろうか?といった思いが起こり、釣りに行く度に、1駅か2駅ずつ上流の駅で降りるようになりました。

多摩川での釣りは、クラブ活動が忙しくなってきたために次第に縁遠くなってしまい、上流といわれる地域まで足を伸ばすには至りませんでした。それでも、初めての駅で電車を降り、川の様子はどんなだろうかと、ワクワクしながら歩いた記憶はいまも鮮明です。

川はいったい何処から流れてくるのだろう。誰もが感じる疑問なのでしょう。琵琶湖から流れ出す淀川のように、大きな湖に端を発する川もありますし、私が親しんだ多摩川のように、山(多摩川の場合は甲州市 笠取山)を深く分け入った岩の隙間から染み出してくる僅かな流れが源となっている川もあります。

今回紹介する絵本では、2人の少年が、家の傍を流れる川がどこから流れてくるかを確かめるために、おじいさんの案内で川を遡っていきます。この少年たちの目指した川の源はどんな所だったのでしょう。少年たちには未知なる場所への探究が、おじいさんにとっては、自分の過去を遡る旅であり、この絵本を読んだ私にとっても、子ども時代を遡る過去への旅となりました。この本を読むあなたにとっても、きっと素敵な旅になると思います。

川をテーマにした絵本はたくさんあります。絵本だけではなく、川が主要な舞台やモチーフになっている小説や映画もたくさんあります。それだけ、川は私たちの暮らしと深く結び付いています。そして、そこに関わる多くの人間の人生や思い出を飲み込んで、川は変わらずに流れていくのです。そういえば、『A  river  runs  through  it』(1992年、アメリカ)という映画もありましたね。(S.T

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