No 185
絵本のタイトル 鳥の島
作者 川端 誠
訳者
出版社 BL出版

185  『 鳥の島 』

先日、絵本作家の川端 誠さんをお招きし、「絵本とともに旅をして」と銘打った講演会を行いました。川端さんが「楽しくなければ講演会じゃない」とおっしゃっている通り、終始笑い声に包まれた楽しい会となりましたが、楽しいお話の中にも、絵本作りに込める川端さんのプロとしての厳しさも十二分に感じることができました。
 今回紹介する絵本は、川端さんのデビュー作であり、第5回絵本にっぽん賞を受賞した作品でもあります。川端さんというと『落語絵本シリーズ』『お化けシリーズ』など、コミカルな作品がすぐ思い浮かびますが、この絵本は、大空や海のむこうに憧れ、群れを離れ飛び立っていった鳥たちを描いた、かなり切ないお話です。『森の木』『ぴかぴかぷつん』と、内容はそれぞれ独立していますが、ものがたり3部作となっていますので、合わせてご覧いただけると良いのかもしれません。

私はこの絵本を見た時に思い出したことがいくつかありました。その一つは、学生の頃に人気を博していた、小説家の開高健を登用した某ウィスキーのCMで、そのシリーズの中に『雁風呂』というものがありました。それは、冬、海を越えて日本に渡ってくる雁は、それぞれが口に小枝を1本くわえていて、飛び疲れると枝を波に浮かべ、その上に立って羽を休めるというのだが、それでも、力つき海に沈んでしまう鳥も多く、日本海の海岸に打ち寄せられる小枝の数だけ海を渡れずに死んでいった雁がいて、村人は、その枝を集めて風呂を湧かし、死んでいった雁たちの弔いをする、というものでした。

もう一つは、時期とすれば同じ頃になるのですが、大学4年になって、同じ研究室の友人と卒業後の進路について話しあっていた時のこと、なかなか進路の定まらない悩みを話すと、その友人に「人間到る処青山ありだよ」と言われた時の記憶です。恥ずかしながら、その時初めて聞く言葉でしたが、自分なりには意味を感じ取ることができ、大いに勇気づけられたように感じました。群れを飛び立った鳥たちにも、内なる「人間到る処青山あり」という言葉が聞こえたのでしょうか。

私は、残念ながら自分の故郷や仲間から飛び立っていくということはできませんでしたが、逆に、どんなところであっても、その場所で実直に生きていくことには大きな意味があると強く感じています。飛び出せなかった私にとっては、余計に切ない絵本ですが、読み終えた後に、一歩前に足を踏み出す勇気を与えてくれる絵本でもあるように感じます。(S.T

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