No 18
絵本のタイトル きょうはみんなでくまがりだ
作者 M・ローゼン/再話
H・オクセンバリー
訳者 山口文生
出版社 評論社

18きょうはみんなでくまがりだ

クマは、大きくて恐ろしい動物という印象があります。この絵本に登場するクマも、恐ろしい形相で子どもたちを追いかけてきます。しかし、その礼儀正しいことといったら…。 登別にあるヒグマ博物館の前田菜穂子さんによると、「ヒグマは本来森に棲み、人との接触を嫌う穏やかで静かな動物である。」とのことです。また、「問題を起こすのは人間の食べ物に餌付いてしまった一部のクマであり、アイヌは問題を起こすクマをウェンカムイ(悪い神)と呼び、全く別の扱いをしていた。」とも言っています。(2002.4.6 朝日新聞 私の視点) クマの写真家として名高い星野道夫さんは、不幸なことにクマに襲われて亡くなられましたが、星野さんを襲ったクマも人に餌付けをされたクマだったと聞いています。星野さんが信じていたように、クマが本来は穏やかで静かな動物であることには間違いないのでしょう。

昔話や絵本の中でも、オオカミがすっかり悪役にされていることとは対照的に、クマは比較的温厚な役柄で描かれていることが多いようです。そして、この絵本のクマも本当に礼儀正しいクマなのです。四つ脚で走ればすぐに追いつくものを、子どもたちに合わせてわざわざ二本脚で追いかけてくれるし、垣根はちゃんと木戸を開けて入ってくるし、ドアが閉まっていれば、それを壊して無理に入ってくるなんてことはしないのです。そして、最後の見開きのページの、家路をたどるクマのちょっと疲労感漂う後ろ姿からは、「全く、子どもの相手は楽じゃないよ」と言っている声が聞こえてくるのです。

この本の絵を描いているH・オクセンバリーは、絵本作家として有名なジョン・バーニンガムの奥さんで、他にも『3びきのかわいいオオカミ』(冨山房)などといった動物を主人公としたユーモラスな絵本をたくさん描いています。(T・S)

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