No 15
絵本のタイトル はるにれ
作者 姉崎一馬/写真
訳者
出版社 福音館書店

15はるにれ

『はるにれ』は、1979年に出版された写真絵本です。それまでの写真絵本には図鑑的なものが多かったのに対して、著者の姉崎一馬は、はるにれの木そのものの移り変わりではなく、自然や季節の移ろいの世界を表現したかったと語っています

人も自然も2つの時間の流れの中で生きています。ひとつは、1日、1年といったサイクルの中で循環する時間の流れで、もう一つは、人の一生のように繰り返すことなく過ぎさってしまう時間の流れです。この本を目にした人は、ここで描き出されている四季を巡る美しい時の流の中に自分も同じように身を置いていることに気付ききっとうれしくなるのだと思います。

はるにれは、エノキやケヤキと同じニレ科の落葉高木で、3~4月の春の季節に葉に先立って花が咲くことから、秋に花の咲くあきにれに対してはるにれと呼ばれています。しかし、コブシやモクレンの様に鮮やかに春を告げる花ではなく、良く見なければ花とも思わずに見過ごしてしまうような花であったことで、かえって見かけの美しさや変化にとらわれずに、木の持つ本来の生命感が表わされているように感じます。最後のページに描かれているはるにれの木は、暖かな「はる」のイメージではなく、大地にしっかりと根を張り、葉を体いっぱいに生い茂らせた逞しい大地の母の思いすら感じさせるのです。(S.T)

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