No 13
絵本のタイトル こんとあき
作者 林明子
訳者
出版社 福音館書店

13こんとあき

林 明子は、『はじめてのおつかい』をはじめとして、女の子の成長していく姿を優しく見守るように描いています。そして、どの作品も、子どもたちの輝くような表情と、本当に動きだしそうな姿に満ちていて、読む人を暖かな気持ちにさせてくれます。今回紹介する『こんとあき』もそんな絵本の1冊です

幼稚園の3歳児で、避難訓練の非常ベルの音に驚いたことがきっかけで、幼稚園に来られなくなった子どもがいました。非常ベルの音が怖かったというのは、勿論一つのきっかけに過ぎず、それまで我慢してきた大変さがいっぺんに出てしまったのだろうと思います。それから暫くは、お母さんも一緒に幼稚園で過ごすようにしてもらいましたが、赤ちゃんの時からいつも一緒に寝ていた「縫いぐるみのねこ」と一緒に幼稚園に来るということによって、また、一人で幼稚園に来ることができるようになりました。

生まれた時から、ずっと縫いぐるみと一緒に寝ている子どもはそう珍しくはないと思います。お泊まり保育の前に、「うちの子は縫いぐるみがないと寝れないんですけど、持って行ってもいいですか」と心配して言いに来るお母さんもいらっしゃいます。ひょっとしたら、その縫いぐるみたちは、お母さんよりずっと長い時間、その子どもと一緒に過ごし、さまざまな場面で、家の人に代わって、その子どもの気持ちを受け止め、励ましてきているのかもしれません。

『こんとあき』という絵本は、単純に考えれば、女の子の“あき”が、縫いぐるみという心の支えを乗り越え成長していく姿を描いているということになるのかもしれません。しかし、林明子は、子どもたちが、人形や縫いぐるみに励まされたり、心を癒されたりするのと同じように、縫いぐるみ自身も、子どものたち成長を喜びながら、見守り続けているに違いないという思いを、この作品に込めているように感じます。(T.S)

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