No 12
絵本のタイトル ロンポポ オオカミと三にんのむすめ
作者 エド・ヤング/再話
エド・ヤング
訳者 藤本朝巳
出版社 古今社

12ロンポポ オオカミと三にんのむすめ (今月のおまけ)

今月は、ホフマンの『おおかみと七ひきのこやぎ』を紹介しているので、ちょっとお話の似ている絵本を紹介したいと思います。しかし、おまけといっても、1990年のコルデコット賞を受賞したぐらいの絵本ですから、中味の方は折り紙付きです。お話は、『赤ずきん』と『おおかみと七ひきのこやぎ』を足して割ったような筋なのですが、千年以上も前の中国のお話とのことです。(ちなみに、原題は『 Lon Po Po: A Red-Riding Hood story from China』となっています)

絵本を開くと、最初の見開きのページに、「世界中のすべてのオオカミに捧ぐ、汝、人間の世の闇を示す徴として、その名を貸し与えしゆえ」と、何ともおどろおどろしい文句。ページを括ると、これまた何とも恐ろしげな絵とお話が続いていきます。健康的なお母さん方ならこの辺まで読んで、買うのはやめてしまうかも知れません。しかし、この不気味な雰囲気で始まったお話も、半分を過ぎる頃から少し様子が変わり始めます。この後は読んでのお楽しみ

真意の程はわかりませんが、私達がオオカミに対して持っているイメージの多くは、牧畜を主体とするヨーロッパの人々が作り上げたものだという話を聞いたことがあります。そして、この絵本を読んでいくにつれ、オオカミに同情する気持ちが段々と膨らんでくる様に感じます。そう思うと、この絵本は、『三びきのこぶた』、『赤ずきん』、『おおかみと七ひきのこやぎ』などなどと、人間に都合良く利用され続けてきたオオカミへの鎮魂歌に違いないと思えてくるのです。(そう言えば、見開きのページの、おどろおどろしい文句にちゃんとそう書かれてありましたね)

本のカバーに、数枚の隠し絵が組み込まれていると注が書かれていますが、自然に溶け込むように隠されて描かれているのは、単に作者の遊び心からではなく、人間自体、オオカミを象徴とした大きな自然の中に包まれ、生かされている存在にすぎないということを示そうとしているように感じてしまいます。(T.S)

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