No 10
絵本のタイトル おおかみと七ひきのこやぎ
作者 グリム童話 
フェリックス・ホフマン
訳者 瀬田貞二
出版社   福音館書店

10おおかみと七ひきのこやぎ

子どもたちはこわい話が大好きです。数あるお話の中でも、スリル満点でドキドキして、でも最後はほっと安心できる作品の代表ともいえるのが、この『おおかみと七ひきのこやぎ』ではないでしょうか?特に、ホフマンの絵によるこの絵本は、幼稚園や保育園で子ども達に大変人気があり、何度も「読んで!」のリクエストがあります。また、絵本を読んだ後、オオカミと子ヤギごっこの遊びになっていくことも多いのです。

この絵本がどうしてそんなにおもしろいのでしょうか?表紙の絵をご覧下さい。これは、オオカミがしわがれ声をなおし、さらに、まっ黒な前足を白くして、ヤギの家にやってきたところです。お話を聞いている子ども達には、オオカミの悪巧みが事細かく分かっているので、「(ドアを開けたら食べられちゃうよ)開けちゃダメー!」と叫び声が出ます。悪役のオオカミを恐れ、自分は子ヤギの立場になっているのです。でも、絵本の子ヤギはそんなことは何も知らずに、今まさにドアの鍵を開けようとしているのです。ドキドキした緊張感が高まります。その後、恐ろしいオオカミに1匹の子ヤギを残して丸呑みされますが、お母さんヤギの機転で助けられ、最後はオオカミをやっつけてしまいます。

ともすれば、残酷で刺激が強すぎるお話になりそうですが、子どもに対するさりげない配慮があります。ひとつは、お母さんヤギだけが人間の姿で描かれていることで、動物同士の食うか食われるかの露骨な世界を和らげて、子どもが安心してお話を聞けるようになっている点です。また、オオカミのお腹をはさみで切るとぴょこんととびだし、また石をつめるなど、現実には起こりえないようなことも、昔話では決して血生臭くは語らずに、人形劇でみせるように語っています。さらに、ホフマンが父親として、病気の娘を慰めるために愛情を持って語ったお話であり、そのときに描いた絵が元となっていることも、この絵本が長く愛されている秘密でしょう。(K.S)

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