No 287
絵本のタイトル かさもって おむかえ
作者 征矢 清
長 新太
訳者
出版社 福音館書店

287 かさもって おむかえ

kasamotteomukaeモーリス・センダックは、現代の最も有名な絵本作家の一人です。何をもって一番とするのかはわかりませんが、評論家によっては20世紀における最もすぐれた絵本作家であるという人もいるくらいです。そしておそらくその最大の根拠は、この本の成功によるところが大であろうと思えます。暑い夏が過ぎ、朝夕の風が心地よい季節となりました。

しかし、台風や秋雨前線の影響でたくさん雨が降るのも、この頃です。雨が降ったり、止んだりしていた日に、この絵本を子どもたちに読み聞かせました。

急に雨が降り始めた夕方、かおるは駅までお父さんを迎えに行きました。お父さんの傘を抱え、小さな傘をさして、ドロップをなめながら。駅のベンチでお父さんを待っていると、オレンジ色のとらねこに出会います。とらねこに誘われてやってきた電車に乗り込むと、そこにはたくさんの動物たちが。はたしてかおるはお父さんにあえるのでしょうか。

読み終えると、子どもたちがこんな会話をしていました。

「僕もお父さんのお迎えに行ったことあるよ。だけど、お父さんと行き違いになって、お父さんとお母さんがお迎えに来てくれたよ」

「どうして、お家を出る前にお父さんの携帯電話に連絡しなかったのかな」

「充電なかったのかな」

この絵本が書かれたのは1969年です。もちろん携帯電話なんてない時代。コンパクトな折り畳み傘も普及したばかり。今の子どもたちには想像もつかない世界ですね。

みなさんも「傘を届けて」と頼まれた経験があるのではないでしょうか。

1人で冒険に出るような気持ちでワクワクドキドキしながら使命感に燃えて出かけますが、待っているとだんだん不安な気持ちになり、やっとお父さんに会えたときにはホッと緊張が解け、嬉しくて思わず涙があふれてしまう。お父さんもそんなわが子を愛おしく思っていたはずですね。

決して便利で快適な世の中だけが幸せなのではなく、不便だからこそ、お互いを必要とし、助け合う気持ちが育まれ、日常の中でもこんな素敵なドラマが生まれるのだと感じました。

今の子どもたちも便利なものに頼ることなく、小さな大冒険ができるといいですね。困ったときにはオレンジ色のとらねこが力を貸してくれるはずです。 (優)

« »