No 23
絵本のタイトル あめのひ
作者 ユリー・シュルヴィッツ
ユリー・シュルヴィッツ
訳者 矢川澄子
出版社 福音館書店

23あめのひ

$R5BUTFE作者のユリー・シュルヴィッツに関してましては、今月のもう一冊の絵本『よあけ』の中で紹介していますので、ここでは、この本を訳されている矢川澄子さんについて少し紹介したいと思います。矢川さんは、ルイス・キャロルの作品や『マザーグースファンタジー』の翻訳をはじめ、「ことばのくにのアリス」など、多くの著作を書かれています。また、多くの絵本の翻訳を手掛ける一方、この絵本のコーナーの第一回で紹介した赤羽末吉の『つるにょうぼう』の再話をされるなど、その活躍は本当に多岐にわたっています。私はつい最近まで知らなかったのですが、つれあいとして澁澤達彦を9年間支えていたという時期もあったということも驚きです。

矢川さんは、自らを漂白人と称していたそうですが、多くの評論家は、矢川さんを称して「アリスのような人」であるとか「永遠の少女」と呼んでいた聞いています。また、「水晶のように透明な人」と評している文を目にしたこともありましたが、今年の5月29日に、自らの手で71年の生涯を閉じたという記事を見つけた時に、その文が思い出されました。どのような経緯や心の動きがあったのかはわかりませんが、「水晶のように透明」という響きが、いかにも繊細でもろいものに感じられ、もっと漂白人のしなやかさや逞しさを持っていてくれればと残念に思いました。『あめのひ』は、『よあけ』の5年前に出版された絵本で、この2冊の絵本は、お互いに対になっていると言われています。自然の素晴らしさを題材にしている点や大部渋めの色彩、文章の簡潔さなどよく似ている点がありますが、対というよりも、水墨画のようなタッチの『よあけ』に対して、『あめのひ』は雨が降り、流れていく情景がより繊細なタッチで描かれ、矢川さんの簡潔でさわやかな文章ともあいまって、『よあけ』とは違った素晴らしい絵本になっていると感じます。(T、S)

 

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