No 16
絵本のタイトル しょうぼうじどうしゃじぷた
作者 渡辺茂男
山本忠敬
訳者
出版社 福音館書店

16しょうぼうじどうしゃじぷた

jiputa[1]乳児が初めて発する言葉には、「まんま、わんわん、ぶーぶー」など、身近な物を指していることがあります。おそらく、大人にとっては見慣れたものでも、子どもにとっては新鮮な驚きを持って、心を躍らせて見ることができる対象だからだと思います。絵本との最初の出会いでも、その子どもの興味がある日常生活の身近なものが描かれているものを選んで読んであげると、大変喜ぶことがあります。

また、幼稚園に入園したばかりの子ども達は、緊張して泣いたり、居場所が見つからずに不安そうにしている場合があります。そんなときに、保育者に自分が興味を持っている絵本を読んでもらうことで、少し安心することができたり、家庭でも慣れ親しんでいたおもちゃなどで保育者と一緒に遊ぶことでほっとして、その子どもが持っている力を出してくれることがあります。特に男の子は、電車のプラレールや自動車のおもちゃで遊ぶことをきっかけに、気持ちが解放され、友達と関わり出す姿が見られたりします。

さて、乗り物の中でもいわゆる「はたらくくるま」は、その格好や機能(仕事の内容)が多様にあり、子ども達は憧れを持って見ているのが分かります。そのひとつで「赤い消防自動車」は街で見かけてもひときわ目立ちますし、火事を消してしまうというパワーからか人気があるようです。

この絵本に登場する「はしご車ののっぽ君」「高圧車のぱんぷ君」「救急車のいちもくさん」「ちびっこ消防車のじぷた」のことを、子どもは「消防車や救急車」としてとらえると同時に、自分の感情を移入して、そのものになりきった心情で見つめ、共に冒険をしているように感じながら、聞いていることでしょう。山本忠敬の乗り物に対する愛情のある絵がそれを助けています。1963年に初めて出版されている本なので、自動車自体は古い型なのですが、物語はしっかりしていて、全く古さを感じさせない魅力があります。

自分以外の人がみんな素敵に格好良く見える、それに比べて自分ってなんてちっぽけなんだろうというコンプレックスを乗り越えていく過程を、この絵本はスリリングに体験させてくれると思います。自分なりに頑張ったことが誰かの役に立ったり、人に認められることは、大人でも子どもでも大変嬉しいことなのです。自分の持ち味を出して胸を張って生きていいんだよと感じさせてくれる作品です。(S.K)

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