No 98
絵本のタイトル 名前のない人
作者 C・V・オールズバーグ
C・V・オールズバーグ
訳者 村上春樹
出版社 河出書房新社

98 『名前のない人』

namaenonaihito[1]

秋もだんだんと深まり、木々も色とりどりに装う頃となりました。

この時期、私の幼稚園での仕事は、園庭の落葉掃きから始まります。さほど広くない庭なので、一人で掃いても大した苦労ではないのですが、この辺は残しておこう、この葉っぱは残しておこうなど、あれこれ考えていると、なかなかはかどらないのです。

「先の減ったほうきだと音が大きいので、朝早く道を掃く時には、近所迷惑にならないように、新しいほうきを使いなさい」と、父親に言われた言葉を懐かしく思い出したり、掃いても掃いても舞い落ちる落ち葉に閉口しながら、「掃き清めた地面に、落ち葉がはらはらと舞い落ちる様こそ風流なのだ」と、自分で自分に言い聞かせたりもしつつ、それでも私なりに落ち葉の季節を楽しんでおります。

今回ご紹介するのは、こんな季節にぴったりの絵本。しかも、オールズバーグの作品らしく、不思議さも一杯。それに、ちよっとしっとりした気持ちにもなってきます

以前、湖畔の美術館を訪ねた時に、ロビーの窓越しに見える景色が、まるで1枚の絵のようで、同じ景色を戸外から直に眺めた時よりも美しく感じられたことがありました。直接自然に触れたり、その懐に包まれることで受けることで受ける感動ははかりしれませんが、人の意図や表現を通してこそ感じられるものもあるのかもしれません。

秋の一日、一人コーヒーでも飲みながら、この絵本を開いてみるのも、ちょっといいかもしれませんよ。(S.T)

« »